Kiri's diary

きりねこNote

数学関連のことについてよく書きます

複素解析をざっとまとめるー5(様々な複素関数その1)

目次

様々な複素関数

 

 様々な複素関数について勉強していきます. 内容は, 指数関数, 対数関数, 累乗関数, 三角関数です. 実数で定義されていたそれぞれの関数を複素数にまで拡張して, 実数の場合とどこが違うのか, どこが同じなのかを勉強しましょう.


複素関数について

 実関数複素関数の違いについて話します.
 実1変数関数 y = f(x) の場合には,  xy 平面の中にグラフを描く事ができました. なぜなら実数 x と実数 y の対応である関数の表現には2つのパラメーターで事足りるからです. 同様に実2変数関数 z=f(x,y) のグラフは x,y,z の3つのパラメーターがあれば表現できるので, 3次元の空間に描くことができます.しかし複素関数はそうはいきません.
 実1変数関数を y=f(x) と書くように, 複素1変数関数は w=f(z) と書くことが多いです. 複素1変数関数 w=f(z) のグラフを描くには複素数 w 複素数 z を表現するパラメーターが必要です. しかし1つの複素数を表現するには2つのパラメーターが必要です. 直交座標系なら実部と虚部, 極座標系なら原点からの距離 r 偏角 \theta です. つまり2つの複素数が含まれる w=f(z) のグラフを描くには4次元が必要となります.
 残念ながら私たちは4次元を認識することはできません(縦, 横, 高さに加えて, 《色》を用いて4次元を表現する方法はあります). なので,  w=f(z) のグラフを表現するには, 複素平面を2つ用意します. 複素1変数関数は平面と平面の対応です. 関数 w=f(z) は, 複素数 z 複素平面複素数 w 複素平面の対応ということになります. それぞれの複素平面 z 平面,  w 平面と言います. これが実関数とのグラフの違いです. 1つの平面ないしは空間内にグラフを描けないため, 実関数に比べて関数を視覚的に捉えにくいこともあると思います.
 たとえば,  w=f(z)=z^{2} という関数において z 平面上の複素数 z=1+ai\quad(\infty \lt a \lt \infty ) とすると z 平面から w 平面への写像 w=f(z) は次の図のようになります.

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 w=z^{2}

 しかし, それは逆に複素数のいいところでもあります. 1つの複素数を表すのに実部と虚部の2つのパラメーターが必要だからこそ, 複素平面を用いて幾何的に捉えることが可能です. たとえば, 実数 x に定義域として |x|\le 1 が与えられているとき, それを幾何的に捉えるには数直線の上で -1  1 に区切り線をつけるしかありません. 一方複素数 z に定義域として |z|\le 1 が与えられているとき, それは複素平面上で次の図ように表すことができます.

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 |z|\leq1

 先ほどの関数 w=z^{2} のように w 虚数の値も取りうる場合には z 平面と w 平面が必要でしたが,  w が実数の値しか取らない場合には3次元空間にグラフを描くことが可能です(複素数 z に2つのパラメータ, 実数 w に1つのパラメータがあればよい). そのような関数として w=|z| や,  w=|z|^{2} などがあります. このような絶対値の関数を絶対値曲面と呼びます.  w=|z|  w=|z|^{2} のグラフは次の図のようになります. 灰色の部分の平面が z 平面となっています. また,  w=|z|^{2} 回転放物面となっています.

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 w=|z|

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 w=|z|^{2}