Kiri's diary

きりねこNote

数学関連のことについてよく書きます

複素解析をざっとまとめるー13(複素関数の微分その3)

目次

正則性

 正則について話します. 複素関数 f(z) が複素微分可能である条件(CR関係式)は, 実微分可能の条件よりも強いものでした. 正則は, そのCR関係式よりもさらに強い条件を要請します. さらに, あらゆる点で正則な関数をトクベツに正則関数と呼んでいます. この条件をクリアする関数はとても優秀な[我々にとって都合のいい]性質を示します. 優等生のような関数です. 正則と正則関数の定義は次です.

正則
 複素平面上の領域 \mathscr{D} で定義された複素関数 f(z) が, 点 a\in\mathscr{D} のある近傍 U 微分可能なとき,  f(z) は点 a 正則であるという.
正則関数
 複素平面上の領域 \mathscr{D} で定義された複素関数 f(z) が,  \mathscr{D} 上の全ての複素数について複素微分可能であるとき,  f(z)  \mathscr{D} 上で正則であるという. また, このとき f(z)  \mathscr{D} 上の正則関数という.


 この「複素平面上の領域 \mathscr{D} で定義された複素関数 f(z) が~」という表現はテキストなどにもよく出てきます. ここでいう領域 \mathscr{D} とは, 実関数でいう定義域のことです. 実数と違い複素数複素平面上で幾何的に捉えることができるので, 「領域」ということばを使っているわけです. 同様に複素平面上の「点」とは複素数のことです. 厳密さに敏感なあなたは, 「領域」ということばの定義が気になっているかもしれませんね. 解析学において「領域」とは普通, 「空集合ではない連結開集合」のことです. 空集合については, 説明は大丈夫でしょう. 「連結」という概念を説明するには位相空間論について話さなければいけないのですが, それをすると長くなるので今は「連結」に近い「弧状連結」の定義でガマンしてください.

弧状連結
 空間内の空でない部分集合 \mathscr{U} について,  \mathscr{U} 内の任意の2点 a,b\in \mathscr{U} が,  \mathscr{U} 内を通る連続な曲線で結べるとき,  \mathscr{U} 弧状連結であるという.


 本来は「連結」と「弧状連結」の定義は異なります. 弧状連結のほうが強い条件を要請する性質です. しかし複素解析論のテキストによっては「弧状連結な開集合を領域という. 」と書いてあります.
 そして開集合を説明します.

開集合
 ある平面上の部分集合 \mathscr{U} 開集合であるとは,  \mathscr{U} に任意の点 a\in \mathscr{U} に関して, 点 a を中心とする半径 r\gt 0 の開円板がとれることをいう.


 まぁつまり, 直感的には, 「領域の周りのふち[=境界]が \mathscr{U} に含まれない集合」ということです.
 複素微分可能と正則の定義は, ほとんど一緒だが僅かに異なることがわかりますか?複素微分可能, すなわちCR関係式を満たすことは, 複素平面上のある1点のみでも定義できました. 複素関数 f(z) は点 z=a でのみ複素微分可能である, というのは数学的に誤っていません.
 しかし, 点 z=a でのみ複素微分可能な複素関数 f(z) は, 点 z=a で正則である, というのは誤りです. 1点のみで複素微分可能な場合には, その点で正則とはいえません. 点 a のある近傍でも複素微分可能であるとき, 点 a で正則であると言えるのです. 当然, これはCR関係式を満たすことよりも強い条件です.
 という風に, 複素微分可能と正則の違いを語ったわけですが, ある1点でのみ複素微分可能な複素関数というのはまぁ, 複素解析を勉強するときにはほとんど考えません. 複素解析のメインの目的の1つは正則関数の性質を理解することなので, 実質的にはCR関係式を満たすこと, あるいは前回いったように f(z)  f(z,\overline{z}) で表したときに \overline{z} が含まれないことが満たされていれば, それはもう正則だといっていいでしょう. ただ, 複素微分可能と正則の定義は違うのだということは覚えておいてくださいね.
 実関数の微分と同じような次の性質が正則関数にも認められます.

正則関数の基本的性質
 複素関数 f(z),g(z) がどちらも領域 \mathscr{D} 上で正則であるとき, 次が成立する.
\begin{align}
\{f(z)\pm g(z)\}' &= f'(z)\pm g'(z) \tag{1} \\
\{f(z) g(z)\}' &=f'(z) g(z)+f(z) g'(z) \tag{2} \\
\left\{\frac{f(z)}{g(z)}\right\} &= \frac{f'(z) g(z)-f(z) g'(z)}{\{g(z)\}^2} \tag{3} \\
\{g(f(z))\}' &= g'(f(z))f(z) \tag{4}
\end{align}
 ただし, それぞれの左辺の関数が領域 \mathscr{D} 上で定義できる必要がある.

 また, おなじみの関数たちも複素平面 \mathbb{C} 全体で正則関数です. おなじみの関数というのは,  \sin z,\cos z  e^{z} のことです.


正則関数のもつ性質

 正則関数はとても優等生な関数で, 多くの性質を持っています. ここでは代表的なものを2つ挙げます.
(1) 正則関数は解析性を持つ
(2) 正則関数は等角性を持つ
 (1)を話します.
 これは非常に重要な性質です. この性質から派生して, いくつかの重要な定理を語ることができます.
 まず「解析性」の定義を述べておきます.

解析性
 ある領域 \mathscr{D} で定義された関数 f(z) が,  \mathscr{D} の各点の近傍で収束ベキ級数に展開できるとき,  f(z) 解析的である, あるいは f(z) 解析関数であるという.


 そして, 正則関数ならば解析関数です. この逆命題も成立します. すなわち, 領域 \mathscr{D} 上の正則関数は, 領域 \mathscr{D} の各点で収束ベキ級数に展開できます. ベキ級数を定義しましょう.

ベキ級数
 a_{n},c\in \mathbb{C} を複素定数,  z 複素数の変数とし, 次の形の級数,
\begin{align}
\sum_{n = 0}^{\infty}a_{n}(z-c)^{n}= a_{1}(z-c)+a_{2}(z-c)^{2}+\cdots \nonumber
\end{align}
 c を中心とするベキ級数という.


 収束ベキ級数とは, 収束するベキ級数のことです.
 関数 f(z) = z は当然複素数全体で正則な関数ですから, その累乗の和
\begin{align}
z+z^{2}+z^{3}+\cdots \nonumber
\end{align}
も関数としては正則になります.  a_{n},c は定数なので, ベキ級数
\begin{align}
\sum_{n = 0}^{\infty}a_{n}(z-c)^{n} \nonumber
\end{align}
が正則であるのは容易にわかります. 一方, 正則関数が解析的であることの証明には複素積分の知識を必要とするので, ここから先は第5章にまわしたいと思います.
 元来, 正則関数は領域 \mathscr{D} 上の複素微分可能性から定義される概念であり, 一方の解析関数は領域 \mathscr{D} 上の収束ベキ級数展開から定義される概念であるので, 両者は違う概念なのですが, 結果的に「 f(z) が正則関数」というのと「 f(z) 解析関数」というのは同じ意味になっているのです.
 (2)を話します.
 「等角性を持つ」は「等角写像である」とも言います. 等角写像について説明しましょう.  z 平面上の2曲線 C_{1},C_{2} が,  z 平面から w 平面への写像 w = f(z) により,  w 平面上の2曲線 \Gamma_{1},\Gamma_{2} にそれぞれ写されるとします. さらに, 2曲線 C_{1},C_{2} の交点 z_{0}  w = f(z) により2曲線 \Gamma_{1},\Gamma_{2} の交点 w_{0} に写されるとします. すなわち w_{0} = f(z_{0}) ということです. このとき, 2曲線 C_{1},C_{2} の点 z_{0} でのなす角と2曲線 C_{1},C_{2}  w_{0} でのなす角が等しいとき,  w = f(z) は点 z_{0} 等角写像であるといいます. そして, 正則関数の持つ等角性とは, 厳密にいうと次のようなものです.

正則関数の等角性
 複素関数 w = f(z) は, 点 z_{0} で正則であるとする. このとき,  f'(z_{0}) \neq 0 を満たすならば,  w = f(z_{0}) は等角写像である.
 すなわち,  w=f(z)  z 平面上の領域 \mathscr{D} で正則な関数ならば,  f'(z) \neq 0 であるすべての点 z\in \mathscr{D}  w= f(z) は等角写像である.


 さて, まずは「2曲線の点 z_{0} でのなす角」を説明しましょう.点 z_{0} は2曲線の交点です.
  2曲線 C_{1},C_{2} の点 z_{0} でのなす角とは, 曲線 C_{1} の点 z_{0} での接線と曲線 C_{2} の点 z_{0} での接線のなす角のことです.
   z 平面上に, パラメータ t を用いて2曲線
 \begin{align}
 C_{1}&:Z_{1}(t) \nonumber \\
 C_{2}&:Z_{2}(t) \nonumber
 \end{align}
 が定義されているとします. 当然,  C_{1},C_{2} は点 t = z_{0} で交わります. すなわち,  Z_{1}(z_{0})=Z_{2}(z_{0}) です. いま, 曲線 C_{1} 上の点 Z_{1}(t_{1})  Z_{1}(z_{0}) , 曲線 C_{2} 上の点 Z_{2}(t_{2})  Z_{2}(z_{0}) をそれぞれ結んだ直線を考えます. この2直線をそれぞれ l_{1},l_{2} とします.
  Z_{1}(z_{0})=Z_{2}(z_{0}), Z_{1}(t_{1}), Z_{2}(t_{2}) はすべて複素数なので, この2直線 l_{1},l_{2} のなす角は,
 \begin{align}
 \arg\frac{ Z_{1}(t_{1})-Z_{1}(z_{0})}{Z_{2}(t_{2})-Z_{2}(z_{0})} \nonumber
 \end{align}
 です. さて,  l_{1},l_{2}  t = z_{0} における C_{1},C_{2} の接線にするために,  t_{1},t_{2} をそれぞれ z_{0} に近づけた極限を考えましょう. 当然, 微分の定義より,
 \begin{align}
 \lim_{t_{1}\to z_{0}}\frac{Z_{1}(t_{1})-Z_{1}(z_{0})}{t_{1}-z_{0}} &= Z_{1}^{'}(z_{0}) \nonumber \\
 \lim_{t_{2}\to z_{0}}\frac{Z_{2}(t_{2})-Z_{2}(z_{0})}{t_{2}-z_{0}} &= Z_{2}^{'}(z_{0}) \nonumber
 \end{align}
 となります. よって, 直線 l_{1},l_{2}  t = z_{0} における C_{1},C_{2} の接線である場合には, 2直線 l_{1},l_{2} のなす角は,
 \begin{align}
 \arg \frac{Z_{1}^{'}(z_{0})}{Z_{2}^{'}(z_{0})} = \arg\left(Z_{1}^{'}(z_{0})\right)-\arg\left(Z_{2}^{'}(z_{0})\right) \tag{1}
 \end{align}
 これが, 2曲線 C_{1},C_{2} の点 z_{0} でのなす角です.
 そして等角写像の証明をしましょう.  z 平面から w 平面への写像 w = f(z) により,  z 平面上の曲線 C_{1}:Z_{1}(t),C_{2}:Z_{2}(t) がそれぞれ w 平面上の曲線
 \begin{align}
 \Gamma_{1}:W_{1}(t) &= f\left(Z_{1}(t)\right) \nonumber \\
 \Gamma_{2}:W_{2}(t) &= f\left(Z_{2}(t)\right) \nonumber
 \end{align}
 に写るとします.また,  w_{0} = f\left(Z_{1}(z_{0})\right)=f\left(Z_{2}(z_{0})\right) , f’\left(Z_{1}(z_{0})\right) \neq 0 , f’\left(Z_{2}(z_{0})\right) \neq 0 が成立しているとします.  f(z) は正則関数ですから,微分可能です. このとき,  w 平面上の2曲線 \Gamma_{1},\Gamma_{2} の点 w_{0} でのなす角(式(1))は,  C_{1},C_{2} のなす角と同様,
 \begin{align}
 \arg \frac{W_{1}^{'}(w_{0})}{W_{2}^{'}(w_{0})} = \arg\left(W_{1}^{'}(w_{0})\right)-\arg\left(W_{2}^{'}(w_{0})\right) \tag{2}
 \end{align}
 となります. ここで, 曲線 W_{1}^{'}(w_{0}),W_{2}^{'}(w_{0}) は, 合成関数の微分法則より
 \begin{align}
 W_{1}^{'}(w_{0}) &= \{f\left(Z_{1}(z_{0})\right)\}' \nonumber \\
 &= f'\left(Z_{1}(z_{0})\right)Z_{1}^{'}(z_{0}) \nonumber \\
 W_{2}^{'}(w_{0}) &= \{f\left(Z_{2}(z_{0})\right)\}' \nonumber \\
 &= f'\left(Z_{2}(z_{0})\right)Z_{2}^{'}(z_{0}) \nonumber
 \end{align}
 これらを式(2)の左辺に代入すると,
 \begin{align}
 \arg \frac{W_{1}^{'}(w_{0})}{W_{2}^{'}(w_{0})} &= \arg \frac{ f'\left(Z_{1}(z_{0})\right)Z_{1}^{'}(z_{0}) }{f'\left(Z_{2}(z_{0})\right)Z_{2}^{'}(z_{0}) } \nonumber \\
 &= \arg \frac{Z_{1}^{'}(z_{0})}{Z_{2}^{'}(z_{0})}
 \end{align}
 となります. これにより
 \begin{align}
 \arg \frac{W_{1}^{'}(w_{0})}{W_{2}^{'}(w_{0})}=\arg \frac{Z_{1}^{'}(z_{0})}{Z_{2}^{'}(z_{0})} \nonumber
 \end{align}
 すなわち,  z 平面上の2曲線 C_{1},C_{2}  z_{0} でのなす角と,  w 平面上の2曲線 \Gamma_{1},\Gamma_{2}  w_{0} でのなす角が等しいことがわかるのです.
 具体的に等角性を確かめてみましょう!最も簡単な正則関数 f(z) = z^{2} を例にとります.
  f(z) 複素数全体で正則な関数です. CR関係式を用いて正則性を検証するのはここでは省略します.
  z = x+iy とすると,
\begin{align}
f(z) &= (x+iy)^{2} \nonumber \\
&= x^{2}-y^{2}+2ixy \nonumber \\
[ &= u(x,y)+iv(x,y)] \nonumber
\end{align}
当然
\begin{align}
u(x,y) = x^{2}-y^{2} ,\quad v(x,y) = 2xy \nonumber
\end{align}
です.
 さて,  z 平面上の2直線
\begin{align}
C_{1}:x &= a\quad (a\neq0)\nonumber \\
C_{2}:y &= b\quad(b\neq0)\nonumber
\end{align}
 f(z) によってどのように w 平面上に移されるのか考えましょう. 直線 x = a  u(x,y),v(x,y) に代入すると,
\begin{align}
u(x,y)&=a^{2}-y^{2} \nonumber \\
v(x,y) &= 2ay \nonumber
\end{align}
となります. よって,  x = a  w 平面上で
\begin{align}
\Gamma_{1}:u = -\frac{1}{4a^{2}}v^{2}+a^{2} \nonumber
\end{align}
を満たす f(z) = u+iv で与えられます. 次に y = b を代入すると,
\begin{align}
u(x,y)&=x^{2}-b^{2} \nonumber \\
v(x,y) &= 2by \nonumber
\end{align}
となります. よって,  y = b  w 平面上で
\begin{align}
\Gamma_{2}:u = \frac{1}{4b^{2}}v^{2}+b^{2} \nonumber
\end{align}
を満たす f(z) = u+iv で与えられます.  \Gamma_{1},\Gamma_{2} はどちらも w 平面(ここでは x 軸方面に u を,  y 軸方面に v をとった平面)上のグラフを表しています.
  z 平面上で2直線 x = a,y=b は点 (a,b) で交わり, その点でのなす角は当然,  90^{\circ} となります.  w 平面上での \Gamma_{1},\Gamma_{2} の交点のなす角も 90^{\circ} となっていれば等角性もっていることがわかるでしょう.
 まず,  \Gamma_{1},\Gamma_{2} の交点を求めましょう. 式より,
\begin{align}
-\frac{1}{4a^{2}}v^{2}+a^{2}&=\frac{1}{4b^{2}}v^{2}+b^{2} \nonumber\\
\frac{v^{2}}{4}\left(\frac{1}{a^2
}+\frac{1}{b^{2}} \right) &= a^{2}+b^{2} \nonumber \\
v^{2}\left(\frac{a^{2}+b^{2}}{a^{2}b^{2}} \right) &=4(a^{2}+b^{2} )\nonumber \\
v^{2} &= 4a^{2}b^{2} \nonumber \\
\therefore \quad v &= \pm 2ab \nonumber
\end{align}
 この結果を \Gamma_{1} の式[当然 \Gamma_{2} の式でもよい]に代入すると,
\begin{align}
u &= -\frac{4a^{2}b^{2}}{4a^{2}}+a^{2} \nonumber \\
\therefore \quad u &= a^{2}-b^{2} \nonumber
\end{align}
 よって,  \Gamma_{1},\Gamma_{2} は2点 (u,v) = ( a^{2}-b^{2},\pm 2ab) で交わることがわかりました.
 ではこの2点でのなす角を調べましょう. まず点 (a^{2}-b^{2}, 2ab) から.
 \Gamma_{1} の式を v について微分して,  v = 2ab を代入します.
\begin{align}
u' &= -\frac{1}{2a^{2}}v \nonumber \\
&= -\frac{2ab}{2a^{2}} = -\frac{b}{a} \nonumber
\end{align}
 これが, 点 (a^{2}-b^{2}, 2ab) での \Gamma_{1} の接線の傾きです.  \Gamma_{2} に対しても同様の計算を行うと,
\begin{align}
u' &= \frac{1}{2b^{2}}v \nonumber \\
&= \frac{2ab}{2a^{2}} = \frac{a}{b} \nonumber
\end{align}
となります. これが, 点 (a^{2}-b^{2}, 2ab) での \Gamma_{2} の接線の傾きです.
 2本の接線の傾きを掛け合わせると
\begin{align}
-\frac{b}{a}\cdot\frac{a}{b} = -1 \nonumber
\end{align}
となるため, この2本の接線は点 (a^{2}-b^{2}, 2ab) で直交していることがわかりました. 等角性です!すごいですねぇ.
 さて, 同様のことを点 (a^{2}-b^{2}, -2ab) に対しても行うと, まず \Gamma_{1} の接線の傾きは,
\begin{align}
u' &= -\frac{1}{2a^{2}}v \nonumber \\
&= \frac{2ab}{2a^{2}} =\frac{b}{a} \nonumber
\end{align}
 そして \Gamma_{2} の接線の傾きは
\begin{align}
u' &= \frac{1}{2b^{2}}v \nonumber \\
&= \frac{-2ab}{2a^{2}} = -\frac{a}{b} \nonumber
\end{align}
 この場合も2つの傾きをかけあわせたら-1になりますね. これが等角性です. 理解していただけましたか?

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等角写像
孤立特異点

 複素平面上の領域 \mathscr{D} 全体で正則な関数, つまり全ての点で微分可能な関数を正則関数といいましたが, 領域 \mathscr{D} の中にいくつか微分不可能な点が含まれてしまう場合があります. そのような点( c であらわすことが多い)を特異点, あるいは孤立特異点と呼びます. この特異点に関する議論も複素解析論では重要です. 特異点に関する性質などは, 複素積分あるいは複素関数の関数的性質を説明してから話そうと思います. 孤立特異点は3つに分類できるんだよ, とかいう話をいつかします.