目次
累乗関数
累乗関数の定義
指数関数では《の複素数乗》を定義しました. 今度は《複素数の複素数乗》を定義します. これを累乗関数といいます. 累乗関数についても, 実数の場合の累乗関数を複素数に拡張したものです. 実数での累乗関数は,
\begin{align}
\log (x^{a}) = a\log x \nonumber \\
\therefore \quad x^{a} = \exp\{a\log x\} \nonumber
\end{align}
というものです. 複素数の累乗関数はこの実数を複素数に置き換えるだけです.
という記号はわかりますか?の指数が長くなるときにはのに指数部分を書くことで見やすくするのです. すなわち, とは数学的に同じもの表します.
累乗関数には対数関数が現れます. 対数関数が多価関数だったように, 累乗関数も多価関数になります. つまり, とすると,
\begin{align}
z^{a} &= \exp\{a\log z\} \nonumber \\
&=\exp\{a(\log r+i(\theta+2n\pi))\} \nonumber \\
&= \exp\{a\log r\}\exp\{(\theta+2n\pi)ai\} \nonumber \\
&=r^{a}\exp\{ai\theta\}\exp\{2na\pi i\}\quad(n\mbox{は整数}) \nonumber \\
[&=r^{a}e^{ai\theta}e^{2na\pi i}]\nonumber
\end{align}
と多価関数になります. 式からわかるように, に多価性を与えているのはの部分です. しかし, が整数である場合には, は常にを満たすため, 厳密に言えば, 累乗関数が多価関数になるのは, が整数でない場合です.
累乗関数の主値
多価性を持つ累乗関数にも主値があります. それは対数関数を主値に固定して,
累乗関数の主値
\begin{align}
z^{a} &= \exp\{a\mathrm{Log}\,z\} \nonumber \\
&= r^{a}e^{ia\theta} \nonumber
\end{align}
と定義されます.
具体例としての値を求めましょう.
は極形式でと表せるため, ここから
\begin{align}
(1+i)^{\frac{2}{3}} &= (\sqrt{2})^{\frac{2}{3}}e^{i\frac{\pi}{4} \frac{2}{3}}e^{\frac{4}{3}n\pi i} \nonumber \\
&= \sqrt[3]{2} e^{\frac{\pi}{6}}e^{\frac{4}{3}n\pi i} \nonumber \\
&= \sqrt[3]{2}\left(\frac{\sqrt{3}+1}{2} \right)e^{\frac{4}{3}n\pi i} \nonumber
\end{align}
とわかります.
多価関数
対数関数のように, 1つのに対してが複数の値を取る関数を多価関数といいます. はの取りうる値が無限に存在するので, 多価関数の中でも特に無限多価関数と呼びます. そもそも, 私達が最初に教わった写像の定義では, 多価関数は写像[関数]に含まれません. 私たちは写像の定義を次のように教わりました.
この定義に基づくと, 次の図のような集合の対応は《写像》とは呼べません.
上の2つの図のうち, 後半の図が多価関数の図になります.本来は多価関数は関数に含むことはできませんが, 写像の定義を拡張して, 多価関数も関数として認めているのです.多価関数に対して, 1つの値に1つの値が定まるような普通の関数のことを1価関数とよびます. 一般に1つの値に個の値が定まる関数は価関数とよびます. 多価関数を1価関数と同様に取り扱うための方法としてリーマン面が考案されました. リーマン面についても, 最後のほうで話しますね.