目次
章末問題
(1)複素数について, が実数となるの条件を求めてください.
(2)整数論の基本的な事実として, 「2つの整数が, それぞれ2つの平方数の和で表せるならば, それらの積もまたある2つの平方数の和で表すことができる」というものがあります.
2つの複素数の絶対値の2乗の積
\begin{equation}
|z|^{2}|w|^{2}=|zw|^{2} \nonumber
\end{equation}
を考えることで, 上の事実を確認しましょう.ただしはすべて整数とします.
(3)を満たす複素数について,
\begin{equation}
\mathrm{Im}\left(\frac{z}{(z+1)^{2}}\right) = 0 \nonumber
\end{equation}
が成立することを示し, これが幾何的にはどのように理解できるか考えてください.また, の場合もこの式は成立するか答えてください.
(付録)代数方程式の解
第1章の「代数的な視点から」では、《代数学の基本定理》について書きませんでした。しかし全く触れないというのは複素数に対して非常に申し訳ない気持ちがするので、付録として書きます.
実数の範囲では解を持たない代数方程式も, 複素数の範囲では解を持つようになります. 代数方程式とは変数と定数を用いて次のように表せる方程式のことです.
\begin{equation}
a_{n}x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_{1}x^1+a_{0}=0 \nonumber
\end{equation}
総和の記号を使えばより簡単に,
\begin{equation}
\sum_{k=0}^{n}a_{n}x^{n} = 0 \nonumber
\end{equation}
と書けます. このは係数というのでしたね.
左辺の多項式における変数の次数がの多項式を, 次方程式といいます.
そして《1次以上の複素係数代数方程式は少なくとも1つの複素数解を持つ》という定理を代数学の基本定理といいます.
代数学の基本定理
を複素数とする. 複素数を係数に持つ次の代数方程式
\begin{equation}
f(z) = a_{n}x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_{1}x^1+a_{0}=0 \nonumber
\end{equation}
は少なくとも1つの複素数解を持つ.
これを定理をくりかえし使うことで, 次の代数多項式は個の複素数解を持つことがわかります. の複素数解の1つをとすると, は
\begin{equation}
f(z)=(x-z_{1})f_{n-1}(z) \nonumber
\end{equation}
と変形できます. (多項式同士は割り算ができます. )は次の代数方程式です. そしてこのもまた, 代数学の基本定理より少なくとも1つの複素数解を持つことがわかります. これを何回も繰り返していくと, 最終的に
\begin{equation}
f(z) = (x-z_{1})(x-z_{2})\cdots(x-z_{n}) \nonumber
\end{equation}
の形には変形できるのです. 代数学のことばでは代数学の基本定理がこの性質を“複素数は代数的閉体である”といいます. この《複素解析をざっとまとめる》は代数学の話じゃないのであまり深くは話しませんが, 気になる方のために代数的閉体の定義を示します.
たとえば, 実数全体の集合は体ですが代数的閉体ではありません. 実際, という実数を係数に持つ2次の1変数代数多項式を, 1次多項式の積に分解するには,
\begin{equation}
x^{2}+1=(x+i)(x-i) \nonumber
\end{equation}
のように虚数を使わざるを得ません.
体がわからない方はとりあえず, 体とは《その集合の元だけで四則演算が定義できる集合》のことだと思っておけば大丈夫です.